パイド( Pied )

略表記はP、常染色体上の劣性遺伝形質である。

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パイド遺伝子は部分的に色素の出現を完全に抑制する働きをする。

つまり正常に色がついたベースに、不規則なパターンで純白の色抜けを作る。


                               画像提供:@t_naru_guttata

不規則ではあるが白抜けする箇所には一応の法則性があり、まずアゴやクチバシの上には出やすい。

スプリットの状態でもその部分に小さく白抜けを示す個体は多い。

次に風切羽であり、どんな白抜けの面積の小さいパイドでも風切羽は必ず白い。

そのほかの部分については白い色抜けは不規則であり、左右対称に表れるわけではない。


ライトパイドとは、白抜け部分が少ないもののことを指す。

ヘビーパイドとは、白抜け部分が多いもののことをいう。

   

パイド同士を交配して生まれた仔は親より白抜けが多くなる傾向がある。

そういう鳥どうしの交配を続けていくとどんどんヘビーパイド化が進み、

最後には白抜けが全身に及んだ鳥が出来る。これがクリアパイドである。

   

クリアパイドはホワイト錦華鳥と見分けがつかない。

しかし遺伝子的にはただのパイドと何らかわるところがないので、仔にはパイド遺伝子を伝える。

ホワイト錦華鳥同士を交配したのにホワイトが生まれなかったら、親のどちらかがクリアパイドなのかもしれない。

また、ホワイトとパイドを交配して仔が全部パイドだったら、そのホワイトは実はクリアパイドなのかもしれない。

   

しかし、パイド同士の交配から真っ白な仔ができたとき、必ずそれがクリアパイドだとは言えない。

ホワイト遺伝子はスプリットの状態では外観にサインを表さないからである。

両親がホワイトのスプリットだった可能性も高い。

クリアパイドとホワイトは見分けがつかないため、誤交配されてきてお互いのスプリットを持っていることも珍しくはない。

   

海外のショー基準では、白の面積が体全体の半分であり、全てのマーキングのうち約半分は残っていることが求められる。

言うのは簡単だが好きな位置に白抜けさせるよう操作できないのでなかなか理想の鳥を得るのは難しい。

   

【 サドルバックについて 】

パイド同士の交配を繰り返すと白抜けの量が増えるのは上に書いたとおり。

これによって白斑を拡大していくとクリアパイドになる前に正常な色が残る最後のエリアは背中である。

うまく背中に馬の鞍のような形にだけ色が残ったものをサドルバックと呼ぶ。

  

   

これは別の変異ではなくあくまでパイドである。

品種としても正式に認められておらず「呼び名」であるが、一般的によく知られた名前である。

十姉妹の小斑で、頭にだけ斑があるものを特別に天星と呼ぶのと同様のことである。

   

【 オス・メスの外観 】

パイドだからといってオスとメスに外観の差は出ない。性差は元々のベースの品種による。

不規則な白抜けによりオス特有のマーキングの部分が消されてしまう場合もある。

そういったケースではクチバシの色で性別を判断する。

   

【 ヒナと若鳥の外観 】

ヒナは羽毛が開きかければすぐパイドだと確認できる。

どんなライトなパイドでも風切羽は白抜けしている。

若鳥のクチバシはパイドの度合い(白抜けの分量)によってピンクと黒のまだらを示すことがある。

ベースがフォーンやライトバックなどだった場合にはピンクと茶のまだらを示すことになる。

いずれにしても成長すればクチバシは赤やオレンジに変わる。

   

【 スプリット鳥の見分け方 】

オスメスともに、パイドスプリットを持った鳥は個体によって分量の異なる小さな白い色抜けを示す。

それは大抵は、アゴ、クチバシの上、初列風切、のあたりに現れるが、白い色抜けが全く見られない個体もいる。

   

【 パイドと他変異との結合 】

パイドは他のどの変異とも結合させることが出来る。

だがパイドをブリードするなら系統の管理をきちんとすることが重要である。

品種によってはパイドになってもらっては困る品種もある。

劣性遺伝であるパイド遺伝子はわずかのサインも示さないスプリット鳥によって遺伝子が運ばれ、予期しない、よりによって最も望まない時に白抜けを生じさせる事がありうる。

ほんの1枚の白い差し毛もショー基準では欠点と見なされるため注意が必要である。

   

   


◆ 結合品種の解説 ◆


   

フォーン・パイド( F P )

                          画像提供:@luv_adriana

温かみのある茶色が優しい印象のフォーンがパイドになると、なんだか「和」な感じがするのは十姉妹を連想するからだろうか。 これ、私だけだろうか・・・。

   


   

ブラックチーク・パイド( BC P )

パイドはコントラストを楽しむ品種である。

黒系変異種とパイドの結合はメリハリの効いたシャープな外観を作る。

分量や色抜け位置を思い通りにとはいかないが、元の品種がわかる程度の色抜けにすべきであろう。

   


   

ユーモ・パイド( EM P )

イメージ画像の白の分量がいい感じである。

ユーモにはこれくらいの色抜け量で止めておくのがいいと思う。

せっかく全身が黒い特異な外観が魅力の希少なユーモを白い色抜けだらけにしてしまっては元が何なのかわからなくなる。

   


   

ペンギン・パイド( PNG P )

ペンギンはもともと腹側全面が純白の品種である。

そしてあの南極などにいるペンギンのような配色が魅力でもある。

パイドの不規則な白い色抜けでペンギン独自のパターンを壊すべきでない。

予期せず偶然ペンギン・パイドが出来てしまったときは仕方ないとして。

   

   


   

【 パイド備考 】

パイドはコントラストの美しさを信条とする。

そのためノーマルグレイ、フォーン、ブラックフェイス、ブラックブレスト、ブラックチーク、のようなダークな変異に結合させると十分なコントラストが見られて美しいであろう。

ホワイト以外の白系変異とは結合させるべきではない。

白系とはCFW、フォーンチーク、イザベル(FIS)であるが、それらとの結合では

白い体に配置されたオレンジマークの美しさをパイドがもたらす白い大きな色抜けによって破壊する。

また、ペンギンはその独特のパターンが魅力のためそれをパイドとの結合によって壊すべきでない。


上の2枚の画像は、もともとノーマルだった鳥である。

雑居させていて他の鳥にむしられた鳥は、救出して養生させるとたいていは正常な羽毛がはえてくる。

しかし何度も同じ所を抜かれるか、あるいは抜き方が悪いのか、よくわからないが、

時として再生する羽毛の向きがおかしくなって巻き毛のようになったり、

この鳥たちのように白い羽毛が再生してきてパイドのようになったりする。

この鳥たちはかなりひどくむしられた個体であった。

生えてきてよかったが、何度か換羽を繰り返すうちに正常に色がついた羽毛が生えてくるものかどうか分からない。

   

  

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キンカフリーク/錦華鳥(キンカチョウ)の品種と遺伝解説

キンカチョウには変異が多く実に多彩なバリエーションを展開しています このホームページではキンカチョウの個々の変異遺伝子がもたらす特徴や遺伝のしかた さらにそれらの変異が結合(コンビネーション)して出現する多数の品種を 写真とともに解説したいと思います