フォーンチーク/グレイチーク( FawnCheek/GrayCheek )
略表記はFC,GC、常染色体上の優性遺伝形質である。
普段それがひとつの変異のように「フォーンチーク」と呼んでいるが、これは結合型である。
「チーク」という変異遺伝子を常染色体上に持ち、性染色体上にフォーン遺伝子を持ったもの、つまりチーク変異とフォーン変異の結合型が「フォーンチーク」である。
「チーク」のノーマルバージョンが「グレイチーク」である。
言葉にまどわされないでほしいが「グレイチーク」はグレイ(灰色)のチークパッチを持つという意味ではないし「フォーンチーク」といってもフォーンカラーのチークパッチを持つという意味ではない。
オスはGC.FC.どちらの場合でもチークパッチはオレンジなことが多い。
言葉どおりにグレイのチークパッチやフォーンカラーのチークパッチを現すのはメスのほうである。
この変異の最も大きな特徴は、チークパッチをメスにも出現させることである。
メスにチークパッチを出させるのは、この「チーク遺伝子」と「ブラックチーク遺伝子」だけである。
そしてチーク遺伝子には、ベースカラーを白あるいは白に近い色にするべくユーメラニン(黒と灰色)を減少させる働きがある。
頭~背翼面は白くなり、フォーン色の覆輪を持つものが多い。
ベースの薄まりには個体差がある。
よく見られるのは白っぽいものだが、過剰に白くせずフォーン色の覆輪を残しマーキングもはっきり出したほうが品種の特徴が出て良いと思う。
オスのフランクはノーマルから不変のままチェスナットカラーであるが胸バーと涙マークはしばしば弱められており、ソフトな外観をしている。
ときどきフォーンイザベルやCFWと間違えられるのだが、GC,FCの尾バーは特徴的なので上の大きい写真を見て憶えておいてほしい。
1本の縞が濃淡グラデーションになっていて真っ直ぐでなく歪められているのが特徴である。
BBと結合して縞がなくなってしまってない限りここで見分けられる。
それとGC,FCの腹は黄褐色なので、CFWの白い腹とは見分けがつくはずである。
チーク変異は優性遺伝であり、遺伝子1個でも2個でも発現するが、2個(ダブルファクター)だから白くなるのかどうか分からない。
片親だけFCの仔(シングルファクター)でも白いタイプはいるので、やはり個体差かもしれない。
しかしFC同士をペアにせず、相手にノーマルを組ませたほうがヒナには良い結果が出る。
チーク変異の鳥同士のペアからは非常に白っぽく覆輪や十分なマーキングを欠く、この品種としての魅力の薄い仔ができる。
羽色への影響とは別にフォーンチーク同士のペアは「盲目のヒナ」を引き起こす確率が高くなる。
「盲目のヒナ」は、フォーンチークが持つ一種宿命のようなもので避けることができない。
これについては後ほど詳しく書くのでフォーンチーク、グレーチークを飼う人は必ず読んでほしい。
GC,FCには、しばしばパイドのような白い色抜けが現れることがある。
「FCパイド」ではない場合、それらの大きな白い色抜けは白い部分の境界がソフトにぼかされている点で本当のパイドと見分けがつく。
本当のパイドの白いエリアは境界がシャープで明瞭である。
GC,FCの頭にはよく境界が不明瞭な白い色抜けがある。
グレイチーク( GC )
【 オスの外観 】
体色の薄まりには個体差があるが、白いものが多い。
背翼面には明るいフォーンカラーの覆輪が入ることが多いがイザベルのそれとは入り方が違う。
言葉で上手く説明できないが両種を見慣れてくると違いがわかるのだが。
クチバシの付け根、涙マーク、胸バーは黒~黒が薄まった色である。
尾バーはフォーンカラーの縞の縁にグレーを含む。
腹は黄褐色である。
オスのチークパッチはメスのそれのように一色ではないかもしれない。
半分だけグレーであったりオレンジの線状になっていて残りがぼやけたフォーンであったり、また普通に全部ノーマルなオレンジ色であることも多い。
【 メスの外観 】
体色はオスより白っぽいことが多い。
しかし腹の黄褐色はたいていオスより濃い。
涙マークは薄まった黒~グレーである。
チークパッチはグレーである。
この「チーク」という変異遺伝子を持ったノーマルバージョンのメスにはグレーのチークパッチがあり、性染色体にフォーン遺伝子を持ったフォーンバージョンのメスにはフォーンカラーのチークパッチがあるということである。
フォーンチーク( FC )
【 オスの外観 】
涙マークと胸バーは焦げ茶色である。
背翼面が白いタイプのFCでは涙マークと胸バーは薄茶になり目立たなくなる。
オスのチークパッチはGC同様に、半分だけオレンジだったり線状にオレンジだったりで残りがフォーンカラーということもあるが、大抵はノーマルのように全部オレンジのことが多い。
尾バーの色はベージュの縁に茶色を含む。
【 メスの外観 】
涙マークは焦げ茶色~濃いベージュ。体色による。尾はオスと同じ。
フォーンカラーのチークパッチを持つ。
体の下側は黄褐色とくに下腹は濃い。
【 ヒナと若鳥の外観 】
チークパッチはヒナの時から出ている。
ヒナのクチバシはGCなら黒っぽいであろう。体色による。
【 チーク変異と他変異との結合 】
チーク遺伝子は優性遺伝のため、他の優性遺伝の変異とは簡単に早く結合をみることが出来て、そのためブラックフェイス変異と結合していることがよくある。
優性遺伝子は1個で変異を出現させるので「FC×BF」の交配で即、FC BFの結合が完了した表現型のヒナができるのである。
また、梵天も優性遺伝のため、これとの結合も早い。
しかしいくら優性遺伝で結合が早くてもドミナントシルバーと交配してはいけない。
何だか判別つかない白い外観の鳥が出来てしまうだけで、シルバーを台無しにするだけである。
◆ 結合品種の解説 ◆
オレンジブレスト・フォーンチーク(OB FC)
FCはオレンジブレストと結合してなかなか魅力的な結果を生む。
オレンジブレストはノーマルに対して劣性遺伝の変異だが、例外的にフォーンチークに対してだけはシングルファクターあるいはスプリット(遺伝子1個)の状態であっても結合を示す。
クチバシの付け根と涙マークはオレンジ色になる。
尾バーはグラデーションのかかったオレンジに、上尾筒にもオレンジを含む。
オスの胸バーはオレンジ色で表される。
オスメスともに腹~下尾筒の黄褐色はオレンジ色に傾きいっそう濃くなる。
ブラックフェイス・グレイチーク(BF GC)
優性遺伝どうしのペアリングから仔の代ですぐ結合型が得られる。
簡単にできるのでよく見られる品種だが、強いコントラストのじつに魅力的なオス鳥ができる。
腹側へ拡張された胸バーとロアが黒ではっきり現れ、白い体とのコントラストが著しい。
この2枚のイメージ画像の鳥はかなり背翼面が白いタイプであるが、BFと結合すると背翼面の黄褐色の覆輪のような模様は濃く出ることが多い。それはまたさらに面白いコントラストを提供する。
また、この2枚の画像では尾がよく見えていないのだが、BF GCでは尾バーは歪んだ薄い黒線があるはずである。
FCとBFとの結合ではロアと胸は黒でなく茶色である。
この品種のメスはGCの外観からあまり変化ない。白かったロアがグレーになるくらいである。
謎の白いフォーンチーク(??)
この2枚の画像は左がオスで右がメスである。
たまたまこの2羽だけが出来たというのでなく、フォーンチークからは時々こういう白い鳥ができる。
FCであることは間違いない。
涙マークがオレンジ色になっておりオレンジブレストを持っていることも判る。
で、なぜチークパッチがオスメスともに消えるのか。
腹の黄褐色もなくなり下尾筒あたりにだけ少し残る。
背翼面の覆輪も消えるが風切羽に本当に僅かだけオレンジあるいはフォーンの痕跡が残る。
そしてオスからはフランクさえも消える!
これがFCのダブルファクターで、特徴の過剰によりマーキングが薄くなったうえに白い色抜けが全身に及んだのかと考えるも無理があるので依然未解明。
判明したらここに報告します。
ブラックチーク・グレイチーク(BC GC)
オスのGCのチークパッチを濃くはっきりとさせる目的でブラックチークとの結合に期待したいところで、実際に結合が可能なことは確認されていてチークパッチが濃くなる結果もわかっているのだが、ただこの結合には事前に「遺伝子の交叉」が必要である。
交叉は純粋に偶然な出来事であってその確率を予測できないが、BCとGCが結合した鳥ではオスメスともに非常に暗い色のチークパッチを出現させる。
オスのフランクは黒くなろうとする。(実際にはなかなか黒く変え切れない)
【 GC,FC 備考 】
GC,FCの繁殖で心せねばならないのは「盲目のヒナ」が生まれる傾向のある遺伝的な問題である。
上のほうの【 ヒナと若鳥の外観 】に載せた写真を見てほしいのだが、盲目のFCのヒナは眼窩がへこんだ外観である。
孵化したすぐから盲目だとわかる。なぜなら眼球の出っ張りがないため頭部が細いからである。
GC,FCの遺伝的盲目は、眼球の未形成・未発達によるものである。
なかには視力を持ったものもいるが、目の形が歪められていたり、瞼の切り込みと眼球の位置がずれて(眼球の位置が下)いる。ときには眼窩まで歪曲するかもしれない。
この遺伝的障害を持って生まれてきた鳥は程度が軽くても繁殖計画からは除外するべきである。
障害のある鳥から生まれるヒナが全て障害鳥になるという意味ではないが確率は高くなると考えるのが当然だからである。
しかし遺伝的眼球障害は健常なGC,FCからも引き起こされる。
盲目と一緒に生まれた健常な鳥からも引き起こされるし、過去に目の障害をもった仔を出したことのない系統のGC,FCからでも出る。
これはGC,FCという変異遺伝子の宿命のようなもので「運が悪かったら出る」としか言えない。
逆に運が良かったら出ないかもしれない。
ずっとフォーンチークを飼育繁殖しているが盲目など出来たことがないと言う人もいる。
心にとめておいてほしいのは、GC,FCを繁殖するかぎりは、こういう遺伝的障害が出る可能性を宿命として背負っているということである。
宿命なので完璧には防ぐことが出来ないのであるが、せめてできる事として
●障害を持って生まれてきた鳥を繁殖に使わない(障害を持った鳥と一緒に生まれた兄弟姉妹も使わないほうがよいのかもしれないが....)
●GC,FC同士をペアにせず、相手にはノーマルやフォーンを組ませる。
こうすることで盲目の発生率は減少すると思われる。
もうひとつ最後に、GC,FCの目の障害はダブルファクターだから発生するのではない。
優性遺伝の変異には劣性の致死遺伝を持ったものが多く、錦華鳥ではブラックフェイスと梵天とドミナントシルバーがダブルファクターになると卵の中で死んで孵化しないといわれている。
しかしGC,FCではダブルファクターでは白っぽくマーキングの薄い鳥ができるというだけで致死ではないし、盲目はシングルファクターでも出る。
でもやはりダブルファクターのほうが盲目発生率は高いかもしれないので同変異どうしのペアリングは避けるべきといわれている。
【 FCの遺伝的盲目 】← 写真付きで別ページに詳しく書いたので読む気のある方はクリック!
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